神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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MOTOMACHI MAGAZINE MOTOMACHI MAGAZINE 元町マガジン

元町の商人(あきんど)をじゅずつなぎ方式で知人の商人を紹介しています。

4丁目「真誠堂メガネ店」 福岡 和夫さん

4丁目「真誠堂メガネ店」 福岡 和夫さん

お店はいつ頃から始められたんですか?

戦後すぐ頃だと思います。私で4代目になり、かれこれ40年ほど商売させてもらってます。

40年前と比較していかがですか?

元町がどうこうというより、業界全体のレベルが下がってる。昔はメガネってすごく高価なものでした。少しマシな物を買おうと思ったら、大体15万円~20万円ほどが通常価格でした。でも、今は「安ければ安いほうが良い」みたいな感覚が蔓延していますよね。それって何か違うというか...僕たちの感覚とは違うと思っています。僕が扱っている品物自体は、そんなに変わったものはないのですが、僕の仕事の内容自体が少し特殊なんです。僕はフィッティングにこだわっています。その人自身の骨格や姿勢に合わせて調整していきます。細かい骨の凹凸にあわせて、全部修正していきます。僕のメガネを見てください。(ここで、福岡さんがかけているメガネを見せていただく)

うわぁ~、直線ではなくこまかく凹凸がたくさんありますね。

こういったことは、他のメガネ店では誰もしません。古今東西に於いて誰もそういうことはしていない。僕の専門は、「誰もやらないこと、しないこと」が専門です。顔の奥行きを見たり、耳の位置を見たり、さまざまな角度から検証して、調整していきます。人のやらないことのほうが面白いでしょ?

なんだか敷居が高い印象ですが...。

全然高価ではないですよ。僕が取り扱っているものは、中程度だと思います。安くはないけど、結果的には得だと思います。今は業界自体のレベルが下がってるから、僕のメガネが高級に思えるかもしれませんが、そんなことは全くないです。後々のことを考えたら、安いと思いますけど、今の人はそういう考えは持ちあわせてない人のほうが多いのかもしれないですね。美容と健康って今の時代2大テーマじゃないですか?テレビ見ていても、そればっかりでしょ?メガネを正しくかけるということは、美容的にも良いことなんです。食品、化粧品、洋服、様々なジャンルから、美容と健康を謳っている時代なのにメガネだけは注目されてない。間違ったフィッティングでかけ続けると、頭痛や肩こりなど悪影響が出てくるのに。まぁ、重さだけに関して言えば、総体的に今のメガネは軽くなっているので、そこまでこだわらなくても、昔よりかはラクにはなっているんですけどね。人相とは、メガネをかけている人にとっては、メガネを含めてのそれです。メガネが違えば、人相が変わる、すなわち印象がガラッと変わります。だから、骨格だけではなくて、その人のキャラクターも見てデザインして、調整していくことが必要なんです。

バイクや野菜作りが趣味だと伺ったんですが...。趣味のお話も聞かせてください。

店の前に停めているバイクは、1日100人程度ギャラリーが訪れます。モテバイクです(笑)もう1台、イタリアのドカティが自宅に寝ています。ナンバーが付いていないので寝かせています(笑)野菜作りは、約20年です。昔、友人と話していた時「食糧危機が起こる」という話題になったんです。実際、すでに食糧危機は起こってますよね。日本もそうなるよ、と言われて...。何でも急に始めても上達はしないから、自給自足を目指して野菜作りを始めました。でも、ようするに全部遊びだと思っています。バイクに乗って遊ぶ、野菜を作って遊ぶ、メガネも然り。お客様にも「メガネを作って遊ばせるのが、僕の仕事です」と言っています。今の時代は、楽しみ方が違ってきているように思います。味気ないというか、若い人達を見ていると、もう少し上手に遊べば良いのにな~と思います。お金が無いから遊べない、というのが、ほとんどの人達の考えだと思いますが、お金なんてなくても遊べることを知って欲しいし、人生を楽しまないと。

最後に、元町商店街の商人としてメッセージをお願いします。

商店とお客様の関係というのは、表裏一体です。お客様にも言われますが「最近の元町は、良いお店が減った」と。でも、その人が言う「良くない店」というのは、また別の世代には必要とされていて需要があるから、元町にオープンしたんだと思います。いわゆる老舗にはない何かがある、だからお客様が来るわけです。世代のせいではないし、時代と上手くリンクしながら、相互関係を築きつつ商売をしていく、これも心の中に「遊び」の部分がないと、否定する気持ちばかりが芽生えてきてしまう気がします。最近は、年配の人達にも元気がない。ひとつは「先が見えない」ということが大きな要因になっていると思いますが...政治、経済など含めてね。「金があっても使いたくない」。「遊び」がないから息が詰まってくる。買い物ひとつにしても、自分なりの楽しみ方、それに伴う知識がないことは、とても寂しいし、侘びしいことだと思います。インターネットで検索して買い物するなら、比較対象が価格しかない。時代が大きく変化しているから、これはもう仕方のないことですけどね。仕事も趣味も含めて、良い意味で遊び続けることが、有意義な人生だと僕は思います。

(2012.08)

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