神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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MOTOMACHI MAGAZINE MOTOMACHI MAGAZINE 元町マガジン

元町の商人(あきんど)をじゅずつなぎ方式で知人の商人を紹介しています。

3丁目「近江の館」店長 和田 宏之さん

3丁目「近江の館」店長 和田 宏之さん

お店の紹介からお願いします。

「近江の館は、契約農家が栽培したお米や豆類の販売からスタートし、店名どおり、滋賀産の食材を使った商品を販売するお店です。加えて、スーパーや百貨店などではあまり売っていない、日本全国のこだわり商品も販売しています。看板を見て、滋賀特産品のアンテナショップと誤解する方が多いのですが、そうではありません。例えば沖縄産天然太モズクや、青森産黒ニンニク、自分で摘んで乾燥させた柿の葉茶など、サプリメントではなくあくまで食品で、体に良い商品を中心に品揃えしています。こうした他の地域の商品を扱い始めたのは、メーカー・卸・小売りと、機能拡充する中で、商品の充実を図るためですが、これがだんだん増えてきて、直近では滋賀の商品は2割程度にまで減っています」

元町店はいつ頃オープンしたのですか。

「今年で9年目。滋賀県長浜に本社と本店があり、あとは大阪、東京にも出店しています。この店は5店目です」

販売方法にも特徴があるのですか。

「じっくり商品のことを説明し、試食していただいて、お客様に納得して買っていただくのが基本です。特にチラシを打つわけでもないのですが、常連のお客様に支えられ、さらにその方のお知り合いの方を連れてきてもらい、また常連になって下さるというふうにして、地道にお客様が増えてきました。とにかくコミュニケーションが大切なので、店のスタッフそれぞれにお客様が付いて、いわば売る側と買う側が一対一の関係を構築しています」

和田店長は、開店当初から。

「いえ、勤め始めてまだ4年目です。この仕事に就くまで、紆余曲折があり、実は大学を出て最初の仕事が、コンピューターのプログラマーでした。でもやるうちに違和感が出てきて、自分が何をしたいのかとことん考え、行き着いたところが『接客業』。そこでホームファッションの仕事を見つけ、オーダーカーテンの専門店に再就職しました。でも単価が高く、一回のお買い物が何十万円とする。もっと身近な、食べ物を販売する仕事がしたくて、このお店に就職しました」

コンピューターを相手にしていた和田さんが、人を相手に商売をする。全く仕事のジャンルが異なりますね。

「そうです。お客様とのコミュニケーションを図る楽しさを感じることができる仕事です。接客マネージメントにはいろいろなバリエーションがありますが、マニュアルやルールを作って多店舗化していくチェーンストアとは異なり、近江の館は、店側と客側のコミュニケーションによって成立する、レトロな八百屋のイメージです。今となってはそういう店が少なくなった。逆に希少価値が生れているのかもしれません。お客様もわれわれに親しみを感じ、楽しんで下さっているのが肌身で感じることができ、充実感があります」

スーパーマーケットやネットショッピングなど、売る側と買う側のコミュニケーションが不要な買物が増えた反動なのでしょう。ところで、お客様の年齢層は高いのですか。

「近江の館全体では、やはり40~60代が中心で比較的高年齢の方が多く、特に大阪の天王寺店では60歳代以上のお客様が大半を占めています。でも元町には20歳代の方も多く、幅広い年齢層が特徴です」

年上のお客様との接客のコツは。

「先ほど言ったように、コミュニケーションが第一です。それで年上のお客様は、われわれ店のスタッフに対し、孫や娘、息子のような感じで接していただいています。こちらもお客様の好みや求めておられることを熟知し、商品を勧めることができます。お客様の中には、初対面の方にも『これいいわよ』と話しかけ、詳しく説明して下さることも多い。お節介心でもあり、ちょっとした先輩顔をしたいというお気持ちもあるのでしょう。これは年齢には関係ないお客様心理ですが、われわれにとってありがたいことです」

商圏は。

「近隣だけでなく、遠方からのお客様が多いのも特徴です。神戸・元町に立地しているだけに、岡山や広島、四国方面のお客様が観光で来られた時に購入して下さいますが、それで終わらずにあと電話で定期的に注文をいただくほか、3ヶ月に一度くらいの割合でわざわざ買いに来て下さる。黒ニンニクで血圧が下がったとか、免疫力が向上し風邪を引かなくなった。ごぼう茶でお通じがよくなったなど、商品の魅力に惚れ込んで下さっているからこそです。むろん食べ物ですから、美味しさも大切です。そうでないと長続きしません」

それで他の人にも自慢したい(笑)。

「とにかくわれわれが、自信を持って商品をお勧めすることが大切です。毎日試食を提供したり、お客様に詳しく説明することで、自然とその商品に愛着が生れる。そうすると必ず結果が出てきます。一般的に健康に良い自然食品的な商品で、コマーシャルベースに乗らない地味なものは、いかにお客様に商品の優位性をわかりやすく説明し、納得してもらうか、とても難しいと言われますが、お客様とのコミュニケーションを通じて信頼関係を構築することで、可能になると確信しています」

まさに、コンピューターの仕事から転身された、和田さんならではの言葉ですね。でも言うは易し行うは難し。思い通りにいかないことが多いと思います。日々の努力の積み重ねでしょうか。

「元町のお客様は気さくな方が多く、皆さんとてもフレンドリーなので、助かっています。私自身、そこに元町らしさも感じています。いろいろな食べ方や料理アレンジなど、われわれに教えて下さるだけでなく、お客様同士情報交換も盛んです」

和田店長の今後の夢は。

「物販に魅力を感じてこの仕事に就きましたが、今は商品を売るだけでなく、食に関する情報発信基地の役割を担った、コミュニティを作っていけたらと思います。それも、われわれではなくお客様に情報発信してもらう。お客様主導のすごく楽しい店にしていきたいと願っています」(2013.03)

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