神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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元町の商人(あきんど)をじゅずつなぎ方式で知人の商人を紹介しています。

6丁目「STUDIO KIICHI」店長 片山 喜市郎さん

6丁目「STUDIO KIICHI」店長 片山 喜市郎さん

元町六丁目を基点に活躍する、今、最も"ときめく"人がいる。スタジオキイチの片山喜市郎さんだ。店内の工房でスタッフが手作りする革小物は、シンプルかつ素材の持ち味が生きており、ファンが首都圏はもとより全国に拡大中という。元町育ちの片山さんは、クリエーターというより、商店街が良くなってほしい元町ジュニアのスタンスで、日々奮闘している。その胸の内を聞いた。

お店の紹介からお願いします。

「手作りの革小物を製造・販売しています。お店をオープンしたのは2010年の7月。6丁目の空き店舗対策として、ものづくりの店を誘致する『神戸元町夢ショップ構想』の活用第一号としてオープンしました。私は同じく6丁目の『マルヤ靴店』の4代目でもあり、大学卒業後サラリーマン時代を経て、後継者として家業の仕事を始めてからはずっと、自分の店を持ちたいと願っていました。生まれ育った街・元町、特に6丁目で、空き店舗が目立ち元気がなくなっていく姿を目の当たりにして、自分も役に立ちたい、何かしなくては、と強く思うようになったのです。でも資金面がネックとなっていました。ちょうどその頃、この制度がスタートし、ものづくりをテーマに、他にはないオンリーワンのお店を自分の手で作ってみようと。そして靴を通して勉強中だった皮革製品に決めたのです」

お店のコンセプトは。

「まず、素材から縫製まで、すべて国産ということです。使用する皮革は国産の原皮を兵庫県姫路市、たつの市で鞣したもの。兵庫県の皮革は、人工物にはない独特の味と風合いがあり、当店ではこうした素材の持ち味を十分引き出すよう、シンプルかつ長く愛用できる製品を製造しています」

商品は、スタッフが製造されるのですか。

「7~8割をスタッフが手作りしています。ショールームと工房が併設されている店は、全国でもきわめてまれでしょう。スタッフの力量が問われますが、今では働きたいという人がたくさん来てくれるようになりました。でもスキルは千差万別で、社員教育の難しさを肌で感じています」

元町だけでなく、全国で活躍されているそうですが。

「店の売り上げだけでは経営が困難なので、全国の百貨店催事、イベントなどに出店し知名度アップに努めています。販売先ではロフトがメインですが、神戸のホテル、旅館やセレクトショップにも商品を納入し、目下20店近くまできました。当初は店売りだけでスタートしましたが、催事に出るよう知人から声を掛けてもらい、出かけていくたびに徐々にお客様が増えていったのです。すでにリピートにもつながっており、シンプルかつ機能性なデザインだけに年齢層も幅広く、20代から60代まで年代を超えたお客様に支持を受けていると自負しています。それで目下、注文に製造が追いついていない状況です」

嬉しい悲鳴ですね。経営とこだわりのものづくりを両立させるのは難しくないですか。

「偏に、周囲の方に恵まれてここまで来たという感があります。その上で私が心がけているのは、市場やニーズを常に考えることです。ものづくりにこだわりがあってスタートして、実際動き始めると、お客様のいろいろなことが見えてくる。これに合せ臨機応変に対応していかなくてはなりません」

受賞もプラスに働いていますね。

「そうですね。兵庫県が兵庫工業界と共同実施する『グッドデザインひょうご選定委員会』で昨年、『日常生活部門賞』を受賞しました。これは、デザインへの関心を高め、県内の企業・個人が製造販売する商品のデザインレベルアップを図ることが目的の賞です、使う人の立場で開発された優れたデザインの商品を選定するものだけに、「Brief wallet」が選ばれました。本ヌメ革を使用した二つ折財布で、コイン入れの裏側がそのままお札を収納できるコンパクトな商品設計で、シャツのポケットにも入るスマートで実用的な仕上げが評価されたと聞いています」

すばらしいですね。ところで、商売だけでなく商店街活性化の中心的な役割を担っておられるそうですが。

「若手商店主が集まり、6丁目を基点に雑貨やカバンなど、クラフトグッズの制作者を応援しようと、毎年「神戸クラフツアーケード」を開催しています。商店街の空き店舗対策として、ものづくりをテーマに若手事業主の誘致に取り組んできましたが、店舗を構えるには資金面などでリスクが大きすぎる。自分が経験したことなので、気持ちはよくわかります。そこで、まずはイベントを開催し、お客様やバイヤーとの接点を持ってもらおうと、一昨年スタートさせました」

どのような作品が集まるのですか。

「カバンや家具、おもちゃなどの手作り品が出展され、東西約180メートルのアーケード通路中央に、おのおのがブースを設けて展示販売を行っています。このイベントは年に2回開催されますが、インターネット商店街「楽天」に開設するほか、「神戸クラフツアーケード」のネットショップを立ち上げ販売しています。

大活躍中の片山さんですが、「元町らしさ」をどのように感じておられますか。

「改めて聞かれると、答えられない。皆さん『元町らいしい』とか『神戸らしい』とかよく言われ、それぞれにイメージをお持ちなのでしょう。元町に生まれ育った私は、いわば『元町』に馴染みが深いですが、言葉で言い表すのは難しいですね。でも「元町らしい」とか「神戸らしい」とか言われると、嬉しいのも確かです」

愛着がひとしおなのでしょう。

「だからこそ商店街活性化に本気で取組めるのかもしれません。とにかく全国各地にある商店街と同じでは勝てない。オリジナリティある店だとお客様が入ってくるし、そんな店がたくさん集まる街にお客様が多く来てくれる。まずは、若手経営者に出店してもらうことでしょうか。そこから新たな商店街の形が見えてくると思います。」(2013.05)

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