神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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MOTOMACHI MAGAZINE MOTOMACHI MAGAZINE 元町マガジン

元町の商人(あきんど)をじゅずつなぎ方式で知人の商人を紹介しています。

5丁目「放香堂分店」店主 岡田 弘さん

5丁目「放香堂分店」店主 岡田 弘さん

Q.お店をオープンされたのは?

日本有数の茶葉産地、京都の山城に住んでいた両親は、親戚の放香堂本店がこの地から現在の3丁目に移転することに伴い、分店をオープンしないかと持ちかけられ、昭和24年に元町に出てきました。以後60年以上お茶の販売一筋で、私自身52年間もこの商売にたずさわっています。インスタントコーヒーや紅茶も一部品揃えしていますが、あくまで日本茶メーンです。

Q.扱うお茶は?

宇治や静岡、鹿児島など全国の産地から送られてきた茶葉を、ブレンドし提供しています。産地ごとに味や香りに特徴があり価格も異なり、千差万別の消費者の好みに合わせるのですから、ここは当店ならではのノウハウです。

Q.天産物が原料だけに、ご苦労もあるのでは?

お茶は1年に1度しか収穫されないものです。冷蔵庫のない時代は、保存性の良い茶箱に入れて倉庫で保管していましたが、今は真空パックで冷蔵保管し、ずいぶんと収穫したての状態が維持されるようになりました。

Q.売れ筋商品は?

それが実は紅茶なのです。神戸には、旧居留地の外人さんから広まった紅茶を飲む習慣があるせいか、20年以上販売を続けています。1ポンド450g入りで税込み950円と、一般的に売られている同ランクの茶葉より半値以下のお値打ち価格に加え、味や香りは天下一品だけに好評をいただいています。最近、原料の値上がりに為替の影響も加わり、仕入単価がかなり高騰していますが、価格を据え置き頑張っています。そのせいか、それこそ遠くの方からも注文をいただき、宅配便でお届けしています。

Q.ところで60年と言えば、時代が大きく変わりましたよね。

震災もありましたが、大きな時代変化はバブル崩壊です。昔はこの近辺にもオフイスがたくさんあり、法人需要で外商が大半を占めていた時代もありました。これが今ではめっきり少なくなったうえ、官公庁も景気が悪くなり、経費節減で財布の紐が固い。今では、近隣にマンションが建ち並び、若い人が住むようになりましたが、以前のような売上げは期待できなくなりました。この間ペットボトルの普及で、急須でお茶を淹れる機会が減ったこともあります。

Q.厳しいですね。今までお商売を続けてこられたのは?

日本には昔からお茶の文化が根付いており、一定の年齢になると、急須できちんと淹れた本物の味に、精神的な安らぎを求めるようになる。ゆっくりと一杯のお茶を楽しむことこそ日本人の良さではないでしょうか。これをお伝えすることが当店の役割と考えております。そのせいかお客様も常連さんが大半を占めています。

Q.そうですね。店内にお茶の芳しい香りがいつも流れていて、私自身とても心安らぎます。

お客様から『放香堂さんのお茶はおいしい』と言われると、それこそ冥利に尽きるというか、本当に嬉しいものです。お客様や生産農家さんあってこその商売。自分だけ儲けようと思ってもうまくいきません。特に価格最優先で買い叩くようなことをすれば、結果的に農家を潰すことになります。CVSでコーヒーを提供する時代となり、われわれのような小さな店が、大手企業との競争を強いられる厳しい環境下にありますが、長年頻繁にお店に来て下さるお客様や、遠く引越しをしても宅急便で商品を取り寄せて下さるお客様のことを考えると、50年以上この商売を続けてきて本当に良かったと思います。(2015.7)

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