神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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MOTOMACHI MAGAZINE MOTOMACHI MAGAZINE 元町マガジン

135年の歴史を誇る、神戸元町商店街。 そこにはさまざまな店主(あるじ)の営みがあります。このコーナーでは商売のみならず音楽、絵画、書、陶芸、スポーツにいたるまで多彩な能力を発揮する現役店主(あるじ)を紹介していきます。趣味と商売の間を右往左往する人間模様をお楽しみ下さい。
今月は3丁目「河野カバン店」の河野 照子さんをインタビューしました。

3丁目「河野カバン店」元町シスターズ 河野 照子さん

3丁目「河野カバン店」元町シスターズ 河野 照子さん

創業130年を迎える河野カバン店の店主・河野照子さんは、ご主人を亡くして40年近く、女手一つで商いと子育てを両立させてきたほか、全国経営者団体連合会副理事長をはじめとする要職を数々こなし、現在は元町3丁目商店街振興組合の理事を務める、マルチ人間だ。その86歳という御歳からは想像できない、艶やかなお声とお肌の背景には、「女学校時代に陸軍病院の慰問で歌って以来、ずっと続けてきた音楽」があるという。そんな河野さんに、元町商店街のおかみさんが内面に秘めるパワーと根性を探るべく、神戸月堂(3丁目)下村俊子会長と二人三脚で支える、元町商店街婦人会コーラスグループ「元町シスターズ」について語ってもらった。

「元町シスターズ」のスタートは。

「私たちこそ商店街の活性化に一役買いたいという、共通の願いを持つ女性たちが集まり8年前、スタートしました。当時、というか今もそうですが、元町商店街は会議や慰安旅行といった集まりを積極的に行うものの、参加するのはほとんど男性。店番がいることもあり奥様方は総じて留守番に甘んじ、婦人会の活動はあまり活発ではありませんでした。でも商店街のお客様の大半は女性ですし、婦人会の活動を活発化することは、商店街の活性化にもつながる。そのためには今こそ、何かアクションを起こさなくてはという思いに突き動かされたメンバーが集ったのです」

それで音楽を?

「じゃあいったい何をしようと、皆でケンケンガクガク議論しました。そこで、多くの人が参加でき、しかも楽しいのは歌しかないかという結論に達しました。だってカラオケを楽しむ人は多いし、誰しも歌を口ずさみます。嫌いな人はいないでしょう」

歌と一言で言っても、クラシックからポピュラー、歌謡曲まで幅広いジャンルがありますが。

「まず、誰もが知っている童謡からスタートしました。『里の秋』や『夏の思い出』といった。小学校の教科書にも載っている歌で、難しい歌は無理だけど、童謡なら歌えるわ、と多くの人が参加してくれると思ったからです。だからあえて合唱ではなく、まず斉唱からスタートしたのも、ただ誰もが参加できるということを最優先したためです」

設立メンバーは何人だったのですか。

「25~26人だったと思います。まず指導してもらう先生がいる、楽器がいる、練習場所がいる、さあどうしようということになり、若い頃幼稚園教師をしていた私が、音楽大学を卒業され音楽専属教師だった佐野百合子さんに協力を求めて、来ていただくことになりました。楽器はと言うと、私の自宅にあった電子ピアノを持参することでクリア。その後、商店街連合会の決議を経て、ピアノを買っていただくことになり、一番苦労したのは、会場探しでした。基本的には商店街の会館を利用しましたが、他の会合と重なることもあり、そんな時は、商店街で比較的広いスペースのあるお店や商業施設をご好意で貸していただくことも多かったのです」

メンバーにとって、趣味を活かしながらも商店街の活性化につながる元町シスターズの活動は、商売や家事との両立もあり、ハードルがかなり高かったのでは。

「まずは、各自が夫を説き伏せて、練習に参加することからスタートしました。最初は、それこそ童謡くらいしか歌えないと思っていたメンバーが、どんどん歌にはまり込んでいき、月に一度の練習会では飽き足らず、家でも毎日お風呂場で大きな声を張り上げ、本当に練習熱心、一生懸命でした。当然少しずつレベルが向上してきますし、レパートリーも増えてくる。それで神戸元町ミュージックウィークやこどもの日のイベントなど商店街や地域の催しへの出演依頼が来て晴れ舞台にも上ります。そうなると子供たちはもとより、最初は渋々練習に送り出していたご主人たちも、自分の妻の堂々と歌う姿が誇らしいのか、だんだん応援してくれるようになりました。さらにシスターズの活動が、NHKのテレビ番組で放映されたほか、新聞記事にも取り上げられたことを機に、全国的に知られるようになりました。このご縁で私自身、関西シャンソン界の大御所・峰大介さんと親しくさせていただくなど、多くのすばらしい出会いにもつながっています」

すばらしいですね。設立当初のメンバーは、今も続いている。

「残念ながら、徐々に減ってきています。設立時から一貫してメンバーの平均年齢は70歳代で、若い人でも40代。私を含め80代もいるなどシニア層が頑張っています。そのぶん生き甲斐につながる半面、高齢化によるお店の世代交代や、店じまいを機に脱会するメンバーも多く、だんだん人数が減ってきたのです」

せっかくのシスターズ、残念ですね。

「そうです。新メンバーを確保し、若い人につなげるため、参加資格を店主だけでなく店を挙げてに広げるとか、しかも商店街だけでなく周辺店舗にも参加していただくとか、最近では対策を盛んに協議しています。ただ、商店街からの助成を受けている関係上、難しい問題も多く一筋縄ではいきません。それと皆さん、だんだん歌が上手になるにつれ、二部合唱や三部合唱、さらにはより高度な歌にチャレンジしたいという声も上がってきています。これは喜ばしい限りですが、半面多くの人に参加してもらうという設立趣旨からは外れることにもなり、この点でも思案しています。現にシスターズの活動を維持・拡大させるために、設立時より今の方がむしろ、多くのメンバーを集める必要がありますから」(2012.4)

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