神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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MOTOMACHI MAGAZINE MOTOMACHI MAGAZINE 元町マガジン

135年の歴史を誇る、神戸元町商店街。 そこにはさまざまな店主(あるじ)の営みがあります。このコーナーでは商売のみならず音楽、絵画、書、陶芸、スポーツにいたるまで多彩な能力を発揮する現役店主(あるじ)を紹介していきます。趣味と商売の間を右往左往する人間模様をお楽しみ下さい。
今月は3丁目「神戸風月堂」の日崎隆広さんをインタビューしました。

3丁目「神戸風月堂」元町の芸術家 日崎 隆広さん

3丁目「神戸風月堂」元町の芸術家 日崎 隆広さん

本格的な絵を描かれると。

「武蔵野美術大学で日本画を学び、社会に出てから、アルバイトはしながらも基本的には絵を描いて生活をしていて、個展やグループ展など海外展を中心に活動していました。子供の頃から絵を描くのが好きで、お絵かき教室に通った延長線上で、何のためらいもなく美術の専門教育を受けたのです。それが縁あって21年前、神戸風月堂に中途入社し、自分でも想像しなかったネクタイとスーツ姿の生活がスタートしました。今は社長室で会長秘書に従事しています」

入社当初は、どんな仕事を?

「震災で閉店しましたが、当時北野町に店があって、募集を見つけて応募しました。履歴書には美術のことしか書いていなかったこともあり、美術工芸品を集めギャラリースペースを担当しないかと持ちかけられました。神戸市や兵庫県を中心に、時には海外からも作家の方々に来ていただき、展覧会や美術教室を企画するなど、いろいろなことをやらせていただきました」

閉店と同時に元町の本店に移られた。

「営業部から企画室を経て、社長室に。そこで秘書業務と並行して、美術商の免許を持っていますので、展覧会や本店地下ホールで講演会や音楽会の企画開催、そのための作家の先生との交流などを行い、これが商店街活性化の仕事につながって行きました。元町商店街130年基本事業の企画会議に現社長の代理で出席し、企画委員会のメンバーになったことが商店街とのご縁の始まりです」

具体的には。

「元町を支えている人々のセンスと人間性をアピールしよう、を基本コンセプトに、商店街の現役店主や従業員、周辺地域で作品やものづくりで活躍されている人たちの、絵画や書・彫刻・工芸・陶芸など幅広い分野の作品を紹介しようと、120周年を機に『元町の芸術家たち』という企画展を実施していました。130周年でこれをもう一度やろうということになり、企画から個人的に作品を出展するところまで、参加することになったのです」

元町の芸術家という役目も担うようになった。

「十数名のメンバーを中心に『元町商店街から文化ルネッサンスの風を発信しよう』というコンセプトをアピールしようと機運が高まっていきました。その一環で『芸術家たち』展に関しても、10年に一度ではもったいないと、130周年の年にもう一度開催した後、毎年開催するようになり、今年で10回目を数えるに至っています。昨年に正式な『元町の芸術家たち展』実行委員会も発足し副実行委員長を務めさせていただき、5丁目の吉田実行委員長や元町のアーティスト・宮崎みよしさんたちと活動しています」

本店地下にホールを持ち、美術や音楽など地域の芸術活動の推進役で有名な月堂さんだからこそですね。

「そうかもしれません。当社ではそもそも、大切な仕事の一つとして地域の皆さんとの交流があります。そこで私自身、専門の美術関係の仕事だけでなく、商店街の音楽のイベント『神戸元町ミュージックウィーク』の実行委員として、さらには菓子業界の一員として5年前、姫路で開催された『第25回全国菓子大博覧会・兵庫』の企画から携わり実行委員会事務局で展示褒賞部長を務めさせていただくなど、活動範囲やエリアが拡大しました」

ところで、現在も創作活動を継続しておられますか。

「『芸術家たち展』への出展は続けていますが、まとまった時間が取りづらくなったのも事実です。そのぶんちょっとした時間があれば、スケッチするようなことは生活の中で続けていますが、常に絵筆を持ちキャンパスに向かっていた若い頃のようにはいきません。ただ、現在はキャンパスが元町商店街や菓子業界に変わり、そこに皆さんと力を合わせて『企画』というラフスケッチを描き、各人の個性や能力という絵の具をしぼり出しながら絵筆を振るい、一つの作品を仕上げているイメージです。これこそ街作り事業というもので、私自身大きな創作の喜びを感じています。ただ、あくまで神戸風月堂が前面に出ないという、立脚点がぶれないよう心しています。商店街の中にあるだけに、企業と言うより菓子屋の立場でお手伝いしているイメージです」

美術にしても音楽にしても、こんなに多くのアーティストがいる街は、全国でも珍しいのでは。これがうまく発信できれば、商店街の付加価値は向上しますよね。

「港神戸ならではのハイカラスポットとして長い歴史をもつ元町ですが、全国の商店街が抱える問題とは無縁ではありません。だからこそ皆さんと手をつないで、新しいウエーブを起こしたい。その切り口が音楽であり美術でもあります。「神戸元町ミュージックウィーク」や「元町の芸術家たち展」は、派手ではないけれど、積み重ねてきた。これが大切です。商店街の方たちの感性が集まってハイカラでハイセンスな街として発信し、多くの人に商店街に足を運んでもらう。そのための手段が芸術です」

芸術って難しいもののように捉えていました。

「違います。お菓子同様に皆さんに入ってもらいやすいものです。人々がきれいなものを見たり楽しい音楽を聴いたりするのが好きなのは万国共通です。だからいろいろな企画の根底にある、お客様にいかに喜んで頂くという目的がぶれてはなりません」

目下の課題は。

「いかにアピールするかに尽きます。頻繁に買い物に来られる方でも『そんなのやっていたの』と言われるケースもありますから。これは広報部との連動が必須で、この新聞も一つのツールなのかもしれません」(2012.9)

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