神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

MOTOMACHI MAGAZINE MOTOMACHI MAGAZINE 元町マガジン

135年の歴史を誇る、神戸元町商店街。 そこにはさまざまな店主(あるじ)の営みがあります。このコーナーでは商売のみならず音楽、絵画、書、陶芸、スポーツにいたるまで多彩な能力を発揮する現役店主(あるじ)を紹介していきます。趣味と商売の間を右往左往する人間模様をお楽しみ下さい。
今月は5丁目「yoshida」の元町の芸術家 吉田 喜代一さんをインタビューしました。

5丁目「yoshida」の元町の芸術家 吉田 喜代一さん

5丁目「yoshida」の元町の芸術家 吉田 喜代一さん

元町の芸術家たち展へ出展されたきっかけを教えてください。

1994年、元町の生誕120年の時に、立案者の方が"商売だけでなく、元町ならではの文化やアートを発信しよう"ということを提言され、まずはアートに眼をつけてくださったのがきっかけです。絵を描ける人達を探して、第一回目を開催しました。その際、私も出展いたしました。その後、130周年時に再度、開催することになり、それから毎年開催されるようになりました。今では、絵画のみならず音楽や、さまざまなアーティスト達が出展するまでに発展いたしました。いよいよ来年は140周年となります。今は記念誌の製作に取りかかっています。

'94年開催時から欠かさず出品されているということですが、お店との両立は難しくないですか?

東京の「新世紀美術協会」という団体の会員として、同美術展へ出品していました。ところが1997年、ちょうどその頃、店が忙しくなり出品を断念しました。それからしばらくして130周年の「元町の芸術家たち展」が毎年開催されるようになりました。ですから、商売をしながらも絵を描くことをやめたことがありませんので、さほど難しく考えたことはないですね。絵を描くことは好きですし、私のライフワークだと思っています。また、展覧会の締切があると不思議と描けてしまうんです。締切まで大体100日を目処にしています。100号キャンバスを2枚置いて、片方を描いて、乾かしている間に、もう片方を描く...そんな感じです。100号というと大体、障子1枚分ほどです。それが2つも並んでいるとなると...想像してください。また家中に広がる油絵の具の匂いと相まって、妻は嫌がってましたがね(笑)でも、絵を描くことが好きだから仕方ないんです。

毎年、新しい作品を描かれているんですよね?

もちろん、もちろん。私の作品はサイズが大きいんです。100号サイズの作品ばかりなんです。それでも、新世紀美術展への出品を辞めるまでは、ようやってたと思います。若さだったんですかね...(笑)毎年2枚、100号や110号サイズの絵画を東京まで送ってたんですから。東京の上野美術館で小さいサイズの作品を出品しても、全然映えないんです。迫力にも欠けますしね。

油絵を始められたきっかけは何ですか?

高校時代に美術部へ所属していたんです。私の先輩も後輩も、優秀な方がたくさんおられます。後輩では、筑波大学の教授をしている者もおりますしね。私も実は、美術の道へ進みたかったんですが、親父が体調を崩したのをきっかけに店を手伝うようになり、そのまま受け継いでおります。もちろん、洋服も好きですしね。ただ、美術好きというのは独特の癖がありましてね...。素晴らしい作品を見たときに「良いじゃないか。おもしろい!」と言うんです。それを店でもお客様に言ってしまったことがありました。お客様にジャケットを着せて「いいです!おもしろい!」と言ってしまい、お客様にしたら「どういうこと???」という感じですよね。美術仲間の間で通常、褒め言葉として使っている表現を、そのまま洋服の接客にも言ってしまった経験があります。もちろん怒られましたけど(笑)

たくさんの色に囲まれるというのは、洋服と絵の共通点だったりしますか?

絵にしても、洋服にしても、キレイな色というのは美しいです。私が絵を教えていただいた先生は、汚い色を嫌う先生でした。例えば、敢えて濁ったような色を混ぜることで、いかにも深みのあるような絵に見えたりするんですが、先生には怒られました。それが良いか悪いかは別として、私も美しい色を好む傾向にはあると思います。うちは1人、1人に見合った洋服を作るということで商売しています。例えば、お客様の購入履歴などをノートにカルテのようにメモをしています。いつ何をご購入され、何色で...。

やはりどこかに共通点があるからこそ、どちらも続けていけるんですね。

今の時代、時間をかけて、じっくりゆっくり味わっていくということよりも、どちらかと言うと、みんな値段やスピードに右往左往しているように感じます。このような時代だから、その感覚をいちがいに否定することもできませんが、いつの時代でも本物だけは見失いたくないと思っています。安い、早いからと言って、それが偽物というわけではないです。だけど、モノの価値は、決してコストパフォーマンスやスピードだけでは判断できないと思っています。少し余裕があるなら、時間をかけて1つのモノを味わってもらいたいと思います。時代の流れに上手く乗ることだけを考えるのではなく、ほんの少し、自分の生活に「こだわり」を持つ。良い意味での「こだわり」を持ち続けて行って欲しいと思います。

次は元町のアイディア「神戸元町1番街商店街振興組合理事長 蓮池 国男さん」です。
「インタビュー 松村 奈央子」

PCサイトを見る スマホサイトへ戻る