神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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元町の商人(あきんど)をじゅずつなぎ方式で知人の商人を紹介しています。

5丁目「豆倶楽部」 森 昌紀さん

5丁目「豆倶楽部」 森 昌紀さん

珈琲豆専門店「豆倶楽部」。神戸の老舗「神戸珈琲」の直営店で、世界の産地から届く新鮮な豆を、その場で挽いて販売する。コーヒーの芳香ただよう同店の魅力について、店主の森昌紀さんに語ってもらった。

店の歴史から教えてください。

「意外にもスポーツ専門店が前身で、昭和23年にスタートし、スポーツ用品全般を扱っていました。私は昭和35年に入社し、官公庁や学校などの営業で、お客様からの依頼があればすぐに飛んで行って、サッカーのゴールネットの組み立てのお手伝いもしていました。それは楽しい時代で、企業や官公庁で野球のチームがどんどんできていましたから、売り上げも順調でした」

それがなぜ、珈琲専門店に。

「平成2年に大型マンションが建設されることになり、在庫が多くて倉庫が必要、しかも手間がかかるスポーツ専門店を今後、存続させることは難しいと、閉店を決心しました。少子化の時代ですし、次は何をしようかと悩んでいたときに、友人のアドバイスもあり、平成4年にコーヒー豆専門店をオープンしました。コーヒー豆には新鮮さが求められ、常に焙煎後4日以内の豆を販売し、週に2度発注・入荷するシステムで、ロスがなく不良在庫が発生しない点に魅力を感じました。「豆倶楽部」という店名はタカハシ珈琲(神戸珈琲の前身)の会長に付けて頂きました。ただ当初はスポーツ用品との二足のわらじで、全面的に切り替えたのは平成6年。全くの異業種ですから自信がなかったのです」

全面的な業態変更に、森さんご自身も、相当ためらわれたのでは。

「私自身、今こそ大のコーヒー党ですが、当時はほとんど飲んだことがなく、全く知識がなかったので、神戸珈琲が実施する研修を受け、豆の種類や淹れ方・挽き方などすべてを学びました。最初に驚いたのは、珈琲好きな方が多いということです。特に年配の方に好きな人が多い。だから研修終了後、店でお客様との会話を通じて、学んだことの方が多いかもしれません」

豆倶楽部で販売する珈琲の特徴は。

「神戸珈琲では、世界に有名産地が多くありますが、その中から自社のブラジルクラシフィカードル(コーヒー鑑定士)がカップテイストを通じて合格した指定農園から届くコーヒー豆を、その特徴を十分生かすよう備長炭の穏やかな火力でじっくりと焙煎しブレンドしています。まさに炭火焙煎ならではの香りとアロマ、テイストが特徴です。何より社長自らコーヒー鑑定士のライセンスを得ている点に、品質にこだわる企業姿勢が表れているのかもしれません。そんな特上のコーヒー豆を、常に新鮮な状態でお届けするため、注文を受けてから挽き、真空パックしてお渡ししています」

お客様のエリアは。

「案外遠方のお客様も多いのです。阪神淡路大震災の震災直後、JRがしばらく不通でしたので、サラリーマンの皆さんが三宮に向かって、元町商店街を徒歩通勤していましたから、ずいぶん来ていただきました。電車が開通すると通る人がぱたりと減りましたが、『ファンになったよ』と言って今でも買いに来て下さいます。中には転勤されたお客様もいらっしゃいますが、継続的に注文を下さり、関東や九州まで宅配便で届けています」

珈琲業界も最近、苦しいのでは。

「消費が減ったことを痛感しています。当初は近隣にたくさんのオフィスがあり、よく買いに来て下さっていましたが、最近は事務所の数がめっきり減りました。同時に喫茶店でコーヒーを楽しむ人も減った。家庭でレギュラーコーヒーが飲まれるようになったからですが、スーパーに並ぶ安価な豆を買う人が多い。さらにどこでも購入できるため、ほしいときにほしい量を買い、まとめ買いをする人も減りました」

厳しい時代ですね。だからこそファンの存在が強みなのでは。

「本当にありがたいですね。年配の方が大部分ですが、大阪や京都など遠くから来て、まとめて買って下さいます。そうした方のお気に入りは『紀州備長炭ハウスブレンド』で、当店の売れ筋商品でもあります」

ところで、森さんにとって元町らしさとは。

「ほっとできる街です。全国的にシャッター通りと呼ばれる商店街や市場が増加する中で、元町にはシャッターが閉まっている店はほとんどなく、ありがたいことだと思います。ただ一昔前は、三宮・元町に多くの観光客が訪れ、たくさん買い物をしていましたが、今はその数が減ったうえ、あまり買い物をしなくなったのは、残念なことです。土産物を手にして帰る時代ではなくなったのかもしれません」

一方、中国に代表されるアジアの人たちもコーヒーを多く飲むようになった。

「確かに、経済が発展するとコーヒーの消費量が増える傾向にあります。それに最近、血行改善や大腸癌になりにくいといった、コーヒーの健康効果に対する研究成果が多く発表されていることも、人気に火を付けているのでしょう。今は世界中の人が健康志向ですから。そういう観点で、コーヒーに今後の市場性を感じています。ただ生産量に限りがありますから、近年、何度か価格高騰の危機がありました。でも神戸珈琲さんのおかげで当店への影響は軽微で、その点でも感謝しています」

長年商売を継続させる秘訣は。

「品質重視、顧客重視に尽きます。品質面では神戸珈琲におまかせですが、当店では、初めて来て下さったお客様がリピートして下さるよう、会話やサービス面で心がけています。コーヒーの保存の仕方や淹れ方、飲み方などをアドバイスする中で、最近では、できる限りお砂糖を入れずブラックで飲むようおすすめしています。私自身、この仕事に就いて、初めてコーヒーを飲むようになりましたが、今ではブラックで飲むのが一番おいしいと感じるためです」

ありがとうございました。日本におけるコーヒー発祥の地が神戸元町とされるだけに、今後もコーヒーの魅力を発信し続けて下さい。

(2012.07)

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