神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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元町の商人(あきんど)をじゅずつなぎ方式で知人の商人を紹介しています。

5丁目「西湖園」店主 石井 孝宗さん

5丁目「西湖園」店主 石井 孝宗さん

お店の歴史から教えて下さい。

「私の故郷は中国・浙江省の杭州で、日本で中華料理の仕事をする夢を持ち、1986年に来日しました。91年に日本人に帰化しましたが、中国名は王錫銘です。杭州で三大レストランに数えられる有名店で働いていました。神戸にやってきた後は、中華料理店や洋食レストランで修行し開店資金を貯めて、平成5年6月に元町4丁目で独立しました。でもお客様が増え、予約がどんどん入るようになり手狭となったため、平成17年12月に、現在の5丁目のお店に移転しました。2階もあり50人くらい入れる点に魅力を感じたのです。早いもので20年経ちました。

店名の由来は。

「私のふるさとにあるとても有名な湖の名前で、ご存じの方も多いでしょう。そもそも杭州は古い歴史を持つ風光明媚な街で、日本の街で言うと京都のイメージでしょうか。世界中から観光客も多く訪れますが、魅力は景色だけでなく、食べ物のおいしさにあります。政治は北京、商売は上海で、遊び(観光)と食は杭州。古来より『食は広州にあり』と言われていましたが、今や『食は杭州にあり』なのです。とにかくレストランの数が多く、昼夜問わず常に満席です。人々は1日4食・5食と、一日中食べている」

驚きですね、やはり、かなり太った人が多い。

「いいえ、杭州は中国緑茶の一つである龍井(ロンジン)茶の産地でもあり、とにかく人々はよく食べますが、そのぶんお茶もたくさん飲みます。このお茶の中のカテキンが脂肪を分解し大概に排出してくれるので、たくさん食べる割には、太った人が少ないのです」

いいですね。ところで杭州料理とはどんな料理ですか。

「蒸し鶏や東坡肉など有名料理が多く、甘酢や中華丼のたれなど、日本人が好んで食べる中華料理の味付けのベースにもなっている料理です。これをさらに、日本人向けにアレンジしたのが西湖園です」

特徴は。

「家族で切り盛りする、家庭的な味付けが特徴です。だから毎日食べても飽きが来ない。そのせいかお客様のうち9割以上が常連さんで、午前11時から夜中の11時まで開けていますが、食事だけでなく、料理や故郷の中国や杭州の話、旅行の話など、とにかく私たち家族と話しをしに来られる方も多く、中国語を勉強するために来られる方もいらっしゃいます。昼と夜のアイドルタイムや夜中にも常にお客様がいらっしゃる。レストランのオーナーやホテルの料理長が閉店後に食事に来られるケースも多く、お客様が帰られるまで絶対にお店を閉めないため、閉店時間はあまり守られていません(笑)」

人気メニューは。

「優しい味付けの卵かけごはんが人気で、ふわふわとろとろのオムレツがご飯の上に乗っているイメージです。バリエーションは肉入りとエビ入り、そしてその両方が入っているミックスの3種を揃えています。さらに塩味の焼そばや、自家製春巻き、季節ごとに具材が異なる中華風お好み焼き、油林鶏(ユーリンチー)、揚げワンタンなど、シンプルかつ庶民的な料理が多い。加えてお客様のご要望に応じて、どんな料理でも作ることは可能です」

おいしそうですね。西湖園のこだわりはどこにあるのでしょうか。

「とにかく出来合いのものはできるだけ使わず、一つ一つ手作りしています。うちならではのオリジナルメニューも多く、先ほどの卵かけごはんのほか、レタス包みの具材でも、一般的には挽肉を使いますが、うちは焼き豚を細かく刻んで使っています。その方があっさりとしておいしいからです、やきそばの麺も細めのものを使って、塩味のあっさりとした味付けとするなど、ポピュラーな料理もオリジナルの味に仕立てています。しかも、お客様1人1人の好みで、味付けや量を変えている」

さすが常連さんの多い店ですね。

「ラードは使わず植物油を使い、油そのものの量も控えめで、お客様の好みで、全く使わないケースもあります。炒飯など料理によってはべたつきますが、強めの火力でスピーディに仕上げることで、クリアしています。その炒飯も香ばしい香りが出るよう、塩を使わず醤油のみで味付けしています。しかも価格は20年間据え置きで、かなり控えめ。宴会も予算だけ聞いてあとはお任せのケースが多く、十分ご満足頂き、これがまたリピートにもつながっています」

話は変わって、ご趣味は。

「旅行です。特に海外旅行が好きですね。その国その国の料理を食べ、さらにその国の中華料理を食べてみる。世界中に中華料理があり、国によって味が異なるためです。当店でも日本人の好みの味付けを心がけています。第一日本と中国の醤油は異なるため、料理の味が変わってくるのは当然です」

勉強熱心ですね。ちなみにどこの国の中華料理がおいしいですか。

「中国人が多いせいか、カナダやハワイがおいしかったですね。当店は年中無休で営業していますが、旅行の時は長期の休みをいただいています」

ところで石井さんにとって元町らしさとはなにですか。

「商店街をおじいちゃん・おばあちゃんが孫を連れて歩いている。長い歴史を持つ、世代を超えて受け継がれた街というイメージです」

将来の夢は。

「今までどおり、常連のお客様に愛され続けることに尽きます。だからマスコミなどで取り上げられるのはありがたいですが、一度に多くのお客様が来られ、常連さんに迷惑が掛かる。せっかくのお客様が離れるのは早く、しかもなかなか戻って頂けない。だから今までやってきた地道な努力を続けるだけです。それと息子にうまく引き継ぎ、長く歴史を刻んでいきたい。本場の中華料理を勉強してもらうため、中国にも修行に行かせました」(2013.11)

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