2001年4月から12月に、毎日新聞に掲載紹介された元町周辺の歴史や出来事を紹介しています。
「神戸洋服」技術はトップレベル
神戸の紳士服デザイン技術は「神戸洋服」と呼ばれ、日本でもトップレベルを誇る。ルーツは神戸港開港とともに移住してきた外国人がもたらした洋風文化だ。ハイカラムードは自然に浸透し、地元の名士、藤田積中や神田兵右衛門らは開港翌年には既に洋服を着て歩き、人々の目を見張らせたという。
神戸の洋服店の起こりは1869(明治2)年、居留地に開店した英国の商会。日本人では同年に泉小十郎が開業した。明治10年ごろから数社が盛大に営業。近郊の足袋職人や馬具職人らは神戸に集まってテーラーに転業して神戸洋服の基盤を築いた。
元町通3丁目では83(明治16)年に初代柴田音吉(現柴田音吉洋服店は4代目)が開業。初代柴田音吉は近江商人で実家はャbチ製造業だったが、「これからは洋服の時代」と英国人テーラーに弟子入り。伊藤博文ら政官財界の名士のスーツを仕立てた。明治天皇からの注文は、体に触れることを許されず、「目測」で見事に仕立てたという。
同社は戦後、4丁目に移転したが、創設時は当時珍しい3階建てビル。自社ビルを絵はがきにした暑中見舞いが残っている。同社のチーフカッター、稲沢治徳さん(62)は「初代音吉はたくさんの弟子を育て、神戸洋服の隆盛を築いた。今、仕立洋服は厳しい状況にあるが、いずれ注目される時がくる」と話している。
◆元町点描8回目 2001年4月24日
毎日新聞掲載記事の転載