2001年4月から12月に、毎日新聞に掲載紹介された元町周辺の歴史や出来事を紹介しています。
阪神大水害 商店街も泥の海に
「今年は五月時分から例年よりも降雨量が多く...(中略)...五日の明け方からは俄(にわか)に沛(はい)然たる豪雨となって...(中略)...阪神間にあの記録的な悲惨事を齎(もたら)した大水害を起そうとは誰にも考え及ばなかった」
1938(昭和13)年7月5日の阪神大水害について、谷崎潤一郎は小説「細雪」でこう描写している。
同3~5日で計460㍉を記録した大雨のため、市内各地で土砂崩れと河川はんらんが発生。
被害は家屋約21万戸のうち約72%、死者・行方不明者は計900人以上。
被害総額は約1億4000万円と当時の市総歳出額の2倍に上った。
元町商店街も西側出入り口の北にある宇治川がはんらん。
6丁目から1丁目にかけて土砂が流れ込み、泥海のようになった。
復旧は市内の高校生らも参加し、懸命に行われたが、
もとの姿に戻ったのは約1カ月半も後のことだったという。
当時、元町通2丁目に住んでいた「キリンヤ洋品店」(6丁目)の不破芳子さん(65)は「おじが営業していた6丁目の店は被害がひどく、
母がおにぎりをたくさん差し入れしたそうです」と話している。
◆元町点描14回目 2001年5月22日
毎日新聞掲載記事の転載