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夢街道
柴田剛中(2)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
柴田剛中(2)
2004/09/01
夢街道
幕府使節として、剛中とともに渡欧した顔ぶれはつぎのとおりである。
特命全権公使として、正使に竹内保徳(外国奉行兼勘定奉行)、副使に松平康直(神奈川奉行兼外国奉行)、京極高朗(目付)、一行のまとめやくに柴田剛中(外国奉行支配組頭)のほか通訳に福沢諭吉、福地源一郎ら総勢三十五名の使節団である。
国内のはげしい攘夷運動のなかで、刻々とせまる兵庫・新潟の開港と江戸・大阪の開市の日。いま約束どおり港をひらいて市場を開放すれば、外国人とのあいだで不幸な事件が続発する。時間の猶予を得ることが、幕府にのこされたただひとつの道といってよい。目標は、開港・開市の十年延期である。
パリ。
はじめての会談で、日本側は、人心がひとつになっておらず、物価の安定も見通せないことから開港・開市の無期延期を申しでる。
2回目の会談でフランス側からの回答は、外国代表は諸侯の領内でも安全を保証され礼遇を受けること、江戸幕府はキリスト教禁止令を廃止すること、負傷した在日公使館旗手へ二千ドルの償金を、領事雇用の中国人遺族へ一千ドルの扶助料を支払うこと、マユ・蚕種の輸出を解禁し、フランス産酒の輸入税を五%に減ずることの交換条件に三年間の延期をみとめただけである。
フランス側から示された覚書には、前回示された条件のほかに、駐日公使館用地の譲渡、横浜居留地の拡大、対馬の一港をひらくことをもとめたうえ、外国人が、日本政府の小船を使用することを外国人に課す義務、神奈川港の外国人の商業ならびに周囲十里以内の旅行を妨げること、居留地の周囲に運河、障壁をつくり日本人との交通をさまたげることは条約違反であり善処すること、という条件もつけくわえられている。
使節側は打開策を求めて外相と会見、あらためて開港・開市の十年延期を提案するが、一行の帰途、再交渉しようというにとどまる。 ロンドン。
開港開市延期要請にたいして外相は、話を聞きおくだけにとどめ、駐日公使のオールコックの帰国をまって交渉が展開する。
開港・開市の延期についてはイギリスが、フランス、オランダ、プロシャ、ロシア、ポルトガルの同意も得たとして一八六七年十二月までの五カ年開港開市を延期するロンドン議定書に調印、文久二年(一八六二)十二月帰国する。
岩田照彦
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