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夢街道
洋服の話(3)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
洋服の話(3)
2016/08/01
夢街道
開港当初の洋服商
制度としての洋服導入は遅れてはいたが、開港を機に、神戸に洋服の浸透ははじまっていた。明治元年、最初に、新しい開港地神戸を目指して横浜からやってきたのはドイツ人のブランドだ。山本通に店をかまえたブラオン商会は、茶を輸出し、織物や兵器を輸入する貿易をはじめ、洋服商を開業した。居留地に定着する外国人の顧客獲得に一番乗りしたブランドの西洋服調整技術は、瞬く間に京・大阪はもちろん東京にまで広がっていく。その評判を聞いた東京の山城屋は、明治天皇のお召服調整の命を受け、ブランドを製作指導者のひとりに招く。ブランドは、そのまま東京に居を移すが、特別な注文とはいえ、神戸という土地柄を経て認められたというのは面白い。
明治二年になると、英国人で横浜の洋服商PSカペルが居留地十六番館でカベジュー商会を開業する。洋服仕立の職人は中国や欧州から集め、ヒゲさんと呼ばれたドイツ人、オサカツ(近藤)と呼ばれた日本人の裁断師がいたという。カペルは、神戸が欧州への玄関口になることから、洋服の調整だけでなく西洋の旅具一切も取り扱う旅装具師の看板も掲げた。カペル商会を巣立った技術者たちは、神戸に洋服調整技術を定着させ、その影響は全国に広がっていく。
PSカペルに一年ほどおくれて居留地三〇番舘に開業し小児服、婦人服、紳士服の仕立をはじめたのは英国人のスキップだ。上海から応紹有を職場の指導者に招き、多くの徒弟を擁して活躍、のち神戸で活躍する人たちを育てた。同じころ、其昌号が、華僑の洋服店第一号として居留地一番館に開業している。
日本人の開業もあった。泉小十郎は、当時、日本人としては初めてフランスで本格的な洋服の裁断、調整技術を三年にわたって修業したあと、明治二年、長崎からきて開業した。明治五年になると、長崎で修業したあと神戸へやって来た西田正太郎があり、明治七年には東京からやってきた江戸屋芳蔵も開業している。西田は、神戸運上所(税関)の制服調整を請け負い、一時は職人二十五名前後を抱えて隆盛だったという。
そのほか外国人洋服商には、キャンベル、グオーイス、ポイスル、ダットン、エルザ、タルカットなどの名前も記録されている。
岩田照彦
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