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元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。

元町の教育事情(9)

元町の教育事情(9)

 習字の授業
 間人寺子屋が第一の教科とした習字の授業について書く。
 習字は、一日の授業の半分をあて、ひとつの手本を五日かけて習得させる。児童が着席すると、当番役が児童の名前を呼び、何日目か、を聞く。
 初日は「習いだし」、二・三日目の者は日数をこたえ、四日目を「清書」、第五日は「オサラヘ」。
 当番は、呼出し準備のため、児童の練習日数別に名札をまとめ、師匠が席につくと出席順に児童三名を呼び出す。出席順だから、前に座った三人が、同じ手本でおなじ日数の者とはかぎらない。
 習い出しの者には、まず手本を交付する。手本は、師匠の肉筆のものを与えたがその種類と等位はつぎの順による。
 いろは、仮名文、短文、在郷名、金目、名頭、屋号、五畿内、商売往来、問屋往来、千字本。女子には商売往来の代わりに庭訓、諸色往来などがある。教科ではないが、国民として遵守し、心得るべきこととして、札場に高札や触書文が出次第、その読み方と大意を教えた。 
 手本のレベルは、在学年数と上達度によって、師匠のまえに座った児童の進み具合はみんなちがう。
 師匠は、習い出しの者には読み方、筆の使い方を教え、会得の度合いを見て自席へもどし練習させる。復習の者には、大切に表現すべき箇所に「、」「、、」「、、、」「○」で圏点をつけ、さらに努力をうながす。清書の者には、訂正をうながすこともあるが、ひとつの教材を終了したとして最上位の「宜敷」、中くらいの「宜しく」、最下位の「よろしく」という評点をもらって次の手本へすすむ。
 習字の成績優秀者には、賞もある。成績により百、百五〇などの記号札を与え、一万になると、師匠自筆の短冊を贈った。この栄誉は、同席の児童に知らしめるため、呼出し帖の順序で、首席を占める特典も付与している。
 間人寺子屋の、児童と手を携えた心遣いが見える。
岩田照彦
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