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夢街道
洋服の話(7)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
洋服の話(7)
2016/12/01
夢街道
その後の洋服商
経済状況の変化が洋服の着用者を一気に増やすが、それまでの洋服商をみておきたい。
技術が神戸に根づくと、、故国へ帰える外国人洋服商のあとを受け、洋服づくりに名を遺した元町の人たちの足取りを追ってみる。
英国人が居留地三十番で開業したスキップ・ウォーズ&ハモンド商会で修業した柴田松之助は、神戸駅付近で開業、のち元町通四丁目に店を移している。
明治十年、スキップ商会の下請けとして開業した山中菊次郎(三河屋)は、酒好きがこうじ若くして挫折するが、技術に長けた三河屋からは神崎友三郎、柴田定吉、小林市松らが巣立ち、技術面ではもちろん組合行政の面でも大きな足跡を残す存在になる。人力車夫から転じた神崎友三郎は元町一丁目で開業、元町二丁目では柴田定吉が柴崎洋服店を開いている。定吉は、昭和二十年商組合消滅までの十年間組合長をつとめ、技術協議会などで神戸を代表して審査員を務めた業界の功労者として名を残す。
神尾栄太郎は、東京で修業後大阪を経て神戸で独立、その後三河屋に裁断師として招かれ、退店後元町二丁目で開業、屋根に大きな蝶の看板を揚げて人目をひいた。その優秀な技術で高級顧客に人気を博した。長谷川利吉は元町六丁目に店をもち、船員の客が多かった。職場は活気にあふれ、一度はここで働いたという職人が多かった、という。
元町生まれの小林市松は明治十八年和田鹿に入門、その後、三河屋に転じて修業、裁断技術を習得した。同じ技術者として、柴田音吉との信頼関係はあつかった。
そのほか元町デパートを開業した井上商店は、明治二十七、八年までは洋服屋をしていた。月堂も元町で洋服店をしており、その店からは兵庫の洋服商・鎌尾善太郎が修業 したという。元町で開業、のち平野に移った鈴木貞吉の名前もある。
大正から昭和の初め、より広い層に洋服を、との声にこたえ宮北商店のほか、大阪の雑貨商・片山周八は元町五丁目に支店をだし、既成服の販売と同時に寺尾吉造を下請け職人にかかえ、注文服も請け負った。片山につづいて奈良山は菅原広次を、太陽は柴田伝明らを下請けに、洋服を着用する新しい層に浸透をはかっていく。そのほか大丸・三越・そごうの百貨店が洋服部門を設け、神戸の洋服界は新しい時代を迎える。
岩田照彦
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