神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。

大西座 (五)

大西座 (五)

 こけら落としの正月公演。
 櫓太鼓の音が、木戸口からひとを吸い込んでいく。晴れ着の家族づれ、いなせな大工の棟梁、老婆の手をひく息子、桟敷席への入り口には、祝いの重箱に酒びんを添え、店主につきそう息女の姿があり、体を二つに折って木戸口をくぐる異人の姿もある。
 この日のだしもの。
 岩波書店の歌舞伎年表、明治三年(一八七〇)正月の項に、神戸芝居(座本尾上国吉)の演目のはじめにあるのが「新うす雪」。
 拍子木の音に幕がひかれると舞台は、
 六波羅館。
 家老の葛城民部をはじめ園部兵衛、幸崎伊賀守、秋月大膳らが集まる衆議は、鎌倉将軍若君誕生の祝いに献上する太刀をだれに打たせるか、の相談である。
 園部兵衛は来国行を、秋月大膳は政宗の子団九郎を推す。
 相談の行方は、園部兵衛が推薦した国行に落ち着き、国行が見本に打つ刀は、園部兵衛の子左衛門によって清水観音へ奉納することまでがきまる。
 六波羅館塀外。
 能をみての帰り道、幸崎伊賀守の奥方にであった秋月大膳は、その娘薄雪への思いを打ち明け結婚を申し込む。が、薄雪の心が左衛門の胸にあるのを知る伊賀守の奥方は、断りの言葉を残して後ろ姿となる。
 恨みを形にしようと秋月大膳、家来の渋川藤馬、団九郎と謀り、左衛門が奉納する刀に将軍調伏のヤスリ目をいれて左衛門親子を罪人にと、ヒソヒソ話。
 清水花見。
 清水観音へ太刀の奉納にきた左衛門と妻平、国行の一行。そこへ薄雪が腰元籬(まがき)らと花見にきて左衛門の一行と出会う。妻平と籬は恋仲、薄雪と左衛門の胸のうちを察して恋歌のやりとりの立ち回り。
 奉納の太刀に将軍調伏のヤスリ目を入れられたと知った国行は、ヤスリ目をいれた団九郎をとがめだて。謀りごとを悟られた大膳、国行をなき者にしてもおさまらず、思いがけず薄雪から左衛門にあてた恋歌の短冊を手に嫉妬の色はさらに深まった。薄雪と左衛門を、将軍呪詛の共犯に仕立てて口元がゆるむ。
 幸崎邸詮議。
 それとも知らず薄雪のもとへ忍んでくる左衛門。一方、秋月大膳、園部兵衛らがやってきて、将軍調伏犯処罰の詮議をする。家老葛城民部、喧嘩両成敗の道を選んで左衛門を幸崎伊賀守の家へ、薄雪は園部兵衛の家へ預かりとする。
 園部邸。
 園部兵衛夫妻は薄雪を、いまは夫婦になった妻平・籬のふたりに託して逃す。
 そこへ幸崎家からの使い。左衛門の首を討ったから、そちらでも薄雪の首を討つように。
岩田照彦
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