神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。

売込問屋

売込問屋

 前回、仲間取締の者へ一応相談の上、役所へ願い出る十三業種を紹介した。
 船大工、家大工、杣木挽、飛脚などの仕事は、身についた者でないとできず、またそういう者を集めないと商いにはならない。旅宿屋、古銅古道具、古手、質屋、酒造、水車、薬種屋、米屋は、地元での積み重ねでなりたってきた商いだろう。他国からでてきて、いきなりのれんをかけることができる商いではなく、道端であきなえる商売でもない。
 なじみのない業種がある。売込問屋だ。居留地で、外国人への売り込みをはかる商いである。
 秀吉の時代から、商取引の本場は大阪と、全国的に相場はきまっていた。開港によって神戸に新しい取引がはじめられても、商いの主導権は大阪商人にあると自負しているにちがいない。大阪や京都の大店が、共同で神戸に店をかまえ売り込みをはかる動きもあった。
 神戸・兵庫の業者は、当然その動きを警戒した。事前相談業種のひとつにくわえたのは、そのあらわれだろう。
 三村では慶応四年二月~四月の間、つぎのような人達が「売込問屋」を届け出た。
 神戸町
  天満屋長次郎(昆布・生糸・茶類の売込)
  柴屋源六(茶・生糸・蚕・昆布・綿・蝋油の売込)
  木屋金兵衛(生糸・木綿・乾物類・茶・綿・油・蝋等売込)
  松屋伝兵衛(碗・茶類・糸類・乾物類売込)
  俵屋嘉一郎(鉄物類・茶・生糸・木綿・魚油・種・乾物・紙・醤油・瀬戸物・炭・石灰等売込・舶来品買受)
  柴屋由兵衛(鉄物・茶・生糸・木綿・魚油・種油・チャン(防腐用塗料)・酒・味醂・焼酎等の売込・舶来品買受)
  俵屋万助(生糸・茶・菜種・塗り物・錫・乾物・水油・白蝋・海鼠・昆布・石炭・干し鮑・蚕卵紙・食物の売込)がある。
 二つ茶屋町
  升屋長五郎(生糸・種紙・水油・繰綿・干し鮑・キンコ(宮城県金華山産ナマコ)・鳥飼料・菜種類の売込)
 走水町
  山田屋平四郎・桝屋庄助(糸物類の売込)
 大阪・京都からの売り込みはながくはつづかなかった。外国商館への出入りは、地元に根を張った者の手にゆだねられた。売り込みと同時に、買い受けもある。買い入れた舶来物の商いには、新しい店舗もいる。  人の行き交う街道筋に面した三村の家々に、借り手が群れをなした。
 「神戸の住民は廡を貸して他日母屋を奪われるを知らず。座敷貸し、地面貸しの小利に満足し、軒前の内外貿易に意を注がず、ただ村方繁盛なりと満悦」した、という。
 街道筋が、商店街へ衣替えの時を迎えたのである。
岩田照彦
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