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夢街道
維新直後の布達2 帯刀
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
維新直後の布達2 帯刀
2007/02/01
夢街道
「あらゆる文明国の中でも、武器を持つ習慣が最も広まっている国」といったのは、当時、スイス領事として日本に滞在していたルドルフ・リンダウである。
慶応から明治にかわる直前、神戸では備前兵による発砲事件があり、新政府が諸外国との和親を約束したあとも土佐藩兵による仏軍艦乗組員の殺傷がある。英国公使のパークスも刺客に襲われた。刀剣を手放さない者がまちにあふれている。
おなじような事件がおこらぬともかぎらない、との思いは新政府の側にある。のち文部大臣になる森有礼は明治二年、官吏兵隊以外の廃刀を提唱したが、これに怒った熊本藩の士族が乱をおこす事件にまで発展している。武士が魂とする刀をとりあげる時期までには熟していなかった。
外国人の目からみれば、持ち主の気持ち次第で、いつ目の前に白刃をつきつけられるかわからない、そんな不安があっただろう。
三村にくらす者に刀など縁はない。刀をもつのは、苗字帯刀を許された名主、年寄、庄屋、年寄りなど、村役人というひとたちだ。
その人たちを対象にした布達が、明治三年正月十九日にでた。
兵庫神戸の名主・庄屋・年寄りで苗字帯刀を許された者でも、登庁の際、帯刀致すこと並びに県印の提灯を用いることを禁ず、というものである。
村人を代表する身分の証しとして、登庁のおりには帯刀している。役所からみれば、仲間ともいうべき村役人から刀を廃止させることで、外国人の多い土地柄に配慮した措置であったのかもしれない。村役人の側からみても、飾りのひとつにすぎない帯刀から解放されて肩の荷が降りたのではないか。
村役人を証明する県の印しある提灯をつかうこともならず、とした。提灯の名前にかくれて、帯刀する者があったのだろうか。
その翌日の正月二十日、百姓・町人等の蝙蝠合羽着用を禁ず、の布達をだした。
カウモリ合羽と唱え候衣類、百姓、町人等着用致し帯刀人に紛れまじく候。見附次第、はぎとる、というものである。あらためて「カウモリ合羽」と名指しているのは、そのころ、あたらしく出回った「カウモリ合羽」は、その下に刀を帯びてもみわけにくいできになっていたのだろう。
三村への帯刀禁止が、雨天用具の禁止にまでつながったのである。
しかし、侍士のほか雨天のための用具をつかうな、というのには苦情が多かった。せっかく手にいれた新商品が使えないのである。
百姓、町人にも関門前以外でのコウモリ合羽の着用が許されることになったのは、同年十月十日である。ただし、関門通行のとき、帯刀人のほかは関門まえで合羽を脱いで改める、という条件つきである。
制規ある服着用の節を除く外、帯刀を禁じた太政官布告、いわゆる帯刀禁止令がでたのは明治九年(一八七六)三月である。
岩田照彦
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