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夢街道
神田孝平 (六)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
神田孝平 (六)
2006/10/01
夢街道
事務ひきつぎの中で、外国人とのことに多くを割いている。
懸案事項がある。
雑居地での土地問題だ。雑居地内で外国人に土地を貸すとき、期限をきめてほしいと政府に照会しているが返事がないため二十五年としている。これに英国人が納得しない。英国領事から問題の提起をうけたが、不服なら公使へ控訴せよと回答している。公使から日本政府へ
問題提起がいまだないのか、政府からも返事なく二十五年を法とすればよい。
居留地は条約により外国の会社がガス灯を整備した。雑居地に住む外国人から、居留地にならいガス灯をつけたいと申し出があったが、政府は許可していない。地元でも「内国人民社」を結成して開業の申請があり内務省へ申請しており、許可される予定である。市街にガス 灯をつけるため公債を発行し、すでにその額は一万円に達している。三万円になれば市民の負担なくガス灯の設置が可能になる。
外国人が自宅前の前面海岸に桟橋をつくり、人だけでなく荷物を上げ下ろしするため税関の事務に支障をきたしてきた。開港時、海岸の土地を借りたとき、借地証文にオートルフロンテージ(海岸便利権)と書き入れたために得た権利である。最近、税関業務に支障を来すと の報告はないが、税関が穏便にとりはからっているためか、いずれにしろ今後も問題となることだから過去の記録を調べ、今後の対応をねっておく。
外国人が自由に遊歩できる範囲は、条約で各方十里ときめている。十里を根拠に、外国人のなかには淡路、堺も、遊歩可能な地域とする者がある。英国の公使がやってきたときも、その説を主張したが、同条約に「陸ニ就て測るの語」あるから「海の地ハ規程の地に非さる」 ものとこたえておいた。その後、異議の申し立てはなかったが、紛議のおこらないよう留意すべきである。
遊歩規程内のところで作業(営業)する外国人がある。兵庫県としては、遊歩を許可したのは遊歩旅行のためのもので、営業はあくまでも開港場内に限っている。遊歩許可地域といえども営業行為はみとめていないので心得ておくように。
外国人に雇われている日本人で、県の決まりを無視したり、官吏を蔑視したりする者がある。「県官内民を扱ふに酷にして外民を待つに寛なるによる」もので、雇い主の外国人に依頼して県官の酷を避けようとし、外国人は雇った者の不幸を救おうとする。日本人、外国人を 同等に扱えばおのずから解消する。
外国との交際についていう。公事は条約書や公布指令書によってとりあつかえばよい。協議がむつかしい問題が起これば、それぞれ上司に報告して裁決をあおぐこと。外国人との交際には、私的な関係も欠かせないが、「公私相混するに至らは不都合を生するに至らん」とのいましめも忘れない。外国人の宴席に招かれると女客と席を同じになるが、「出過ぎたる挙動あらんよりは一歩を退て不敗の地に立つに如かず」。風習のちがいから礼節をわすれてはならない。交際事務中はもちろん、平生からむつかしい問題の大半をなくすためには、よい通訳官をえらぶこと。
事務引継演説は、国益を基準に、外国人と接した孝平のあしどりである。
岩田照彦
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