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夢街道
神田孝平 (五)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
神田孝平 (五)
2006/09/01
夢街道
事務ひきつぎがつづく。
経済学者の孝平が、庁内事務のうちもっとも点検の行き届かないのは出納課の業務という。大蔵省で記簿法の研修があるときいているので、数名の優秀な官員を送り込み習得させるため照会するようにと、あらためて書き添える。灰色の支出問題ではなく、会計処理は制度上とらえにくいものとしてみている。理財に詳しい孝平だけに、もっとも気掛かりなことだったのだろう。
区費(税金)の取り立て規則は県会できめるが、使うときは県の承認を前提とした。
使う順序を道路、学校、その他の順とした。開港したまちとして、いままで手付かずだった道路整備の立ち遅れがもっとも目立っていたのである。
すべての支出に優先する事業だけに、道路に一項を設けている。
「道路修築の要ハ迂を化して捷とし、嶮を化して易とし、隘を化して広と為す」にありとする道路の修築がおわらなければ、学校建築にも区費の使用を許してはならないとまで念をいれている。道路修築には苦情のでることあるが、時と所をわきまえ判断しなければならない。私権も公のために譲るよう説諭することが基本、とは裁定を担当する県官への言葉である。
道路優先とはいえ、学業をおろそかに考えたわけではない。
少ない予算で学業の進歩最も速やかなるべきを目途とする。そのために教師を選ぶ文部省の学則を守らせる。教室として空家や空寺など、教場になるところなら何でもいい。
女学校は、市街地に設けるべく話をしているが現在までのところ実現していない。
また外国人も住むまちであり、言葉のわかるものが必要とおもいながら、いままで洋学校の設立ができていない。優秀な小学校生徒に区費で学費をだし、大阪英学校へ入学させているのが二十名近くあり、これからもふやしていく。
貿易では、関税のほかに開港場の道路修築、巡査費用、日本人と外国人間の問題を解決するための費用として「五厘金」なるものを徴収している。どのようなものか定かでないが、開港したまちでは、どこも導入しているらしい。徴収したもので余剰がでればガス灯建設に使用するのがよい。が、この制度は開港地に限られたもので、時期をみて開港した五つのまちが合議のうえ廃止することがのぞましい。
産業振興のため資金を提供したり、資金を集める権利を与える時は、自分がまず十分信じるに値すると確認しなければできないことで、いままでこのような例がなかったため着手していない。とはいいながら、赴任した当時、兵庫県に日刊紙のないのを知り、孝平は助成金をだして "神戸港新聞" を創刊させている。
司法の分野では検事、弁護士の調整を司法省へ請願、警察は、建て増しの許可を得たから建築について協議をはじめるように。娼妓は、正業同様の権利を付与せず、税額の増減、場所の移転、そのほか束縛の規則などで拡張を防ぎ、民衆に及ぼす害をできるだけ防ぐように。
引き継ぎの指示は細部にわたる。
岩田照彦
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