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夢街道
すき焼き(2)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
すき焼き(2)
2015/03/01
夢街道
たべもの起源事典(筑摩書房刊)に よると、すき焼きの語源にはいろいろ ある。和食化された牛肉の鍋料理と して、漢字では「鋤焼き」と書くが、数 奇焼き、数寄焼き、とも書く。いわれ はさまざまで、獣肉を鋤の上で焼い たというのに始まり、杉の薄板に挟 んで焼いたことから杉焼き転化説、 魚肉のすき身焼き、家康が鷹狩の帰 途、百姓に銘じ鋤の上で鳥肉を焼い たから、とするものなどあるが、関西 で発達した魚すきが、具を肉にかえ たことからとするのが祖形、を結論 としている。
横浜開港によって、神戸よりも一 足早く一般のひとも牛肉を食するよ うになった江戸では、「すき焼き」で はなく「牛鍋」といった。関西のすき 焼きは、扁平なすき焼き鍋を熱し、 鉄板の上に油脂以外のものは加えな い。牛肉が熱せられたら調味に浸し た肉を食す。肉がなくなってからそ菜 をいれ、牛肉の液汁と油脂で煎、生卵 をつけて口に運ぶ。関西では、肉を食 したあと、そ菜をいれるが、関東では、 醤油、砂糖、味醂で調味した牛肉に ネギ、玉ねぎ、シイタケ、春菊、白滝、 焼き豆腐を入れて煮込むのがすき焼 きだ。
東西どちらのすき焼きにしても、 味を左右するのは、肉の質、というこ とになる。東京では、今半をはじめ、 今金、今文、今朝など「今」を冠にし た店が多いが、幕末、芝白金にあった 食肉処理場から運ばれる鮮度の良 さを証明するため「今」の字が使われ た。当時は、鮮度が質として評価され たのである。
一方、三重県松阪市にある「和田 金」では、但馬の牛を3年ばかりかけ て飼育、仕上げの1年は、ビールを飲 ませてマッサージ、脂分を細かく肉の 中に散らして霜降りの肉に仕上げる。 この肉をネギと鍋にいれて煮詰め醤 油と砂糖で味付る。生肉の色が変 わった瞬間が食べごろという。肉その ものを育てて食べる、までの食文化で ある。
いずれにしても、神戸の港で働いて いた但馬の素牛とする三田のはたら きものが、すき焼きの味まで左右す る存在になっている。
岩田照彦
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