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夢街道
道路拡幅
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
道路拡幅
2010/10/01
夢街道
明治七年五月、「元町通」を名乗ることになったものの、その道幅は二間あまりのままだった。地元のひとはもちろん地方から出てきて店をかまえるひとがある。買いものする側には、地元のひとはもちろん人口の増加と道の整備によって周辺からの来客がある。居留地からの外国人の買い物もある。二間あまりの道幅に買い物客の人だまりが、通行障害をおこすこともまれではなかっただろう。
神田孝平は、明治九年県知事退任にあたり「道路修築の要は迂を化して捷とし、嶮を化して易とし隘を化して広と為すにあり、人民奮発して改築を企つるは実に見事に属す。但、其の変換の際、往々他の人民の苦情を生ずることあり、其の苦情に当あり否あり、之を裁定するは県官の要務たり、裁定の法に至りては、時と処とにより一を執て諭すへからすと雖、必竟、私は公の為に譲り少は衆の為に譲るに外ならず、道路の事に付、平生吏民に説諭する所大凡如此」といいのこしている。
それから十一年を過ぎた二十年三月、財政難で手がつけられなかった兵庫県は、元町通の「隘を化して広と為す」ため布達を出した。
神戸元町一丁目より六丁目に至る国道線路の儀は狭隘にして不便不堪に付き向後漸次接続宅地を買い上げ道路五間(下水共)取拡可致筈に候條自今該線に沿うたる家屋を新築又は改造せんとするものは、前以て当廳へ届け出道幅等の検定を受けたる後着手すべし
余談になるが、布達がでた四カ月後の七月二日、明治政府は東京と各鎮守府間の道路を国道に編入している。国道への編入が、街道筋の拡幅をいそがせたのだろうか。
まちの賑わいの中心である商店が連なる通りを、二倍以上の広さにしようというのだから容易ではない。神田は裁定の法を「時と処とにより一を執て諭すへからすと雖、必竟、私は公の為に譲り少は衆の為に譲るに外ならず」と言うが、現場では公と私の間で、様々な葛藤があったに違いない。
工事は明治二十三年、六丁目からはじまり同年中に同丁一一七間を完成、二十五年には同町四・五丁目二二〇間を、二十六年三丁目にて一一六間、二十七年元町一・二丁目にて一八〇間を竣工し、改修道路の延長六三三間、七万六千円の工費を投じ五年かけて拡幅した。神田が期待した「人民奮発して改築を企つるは実に見事」というべき協力があったどうか、定かではない。
道路構造は明治十九年八月、内務省訓令で「道路構造保存方法」に、道路の表面は割石で築造し、馬車の通行が頻繁でない場合や搭載荷物が重くない場合は砂利で築造してもよい、としている。馬車の走る道は栄町通にゆずり、買い物客をあつめる元町通は、重いものの通行基準を輪力車において、割石ではなく砂利を利用して仕上げられた。
岩田照彦
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