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夢街道
鈴蘭灯(続ける理由)(3)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
鈴蘭灯(続ける理由)(3)
2011/02/01
夢街道
前回で鈴蘭灯の話は終わることにしていた。しかし、どうも落ち着かない。
日本経済新聞(藤原工氏)の記事から紹介してきたが、明らかになったのは京都の先例と設計者をたしかめる範囲だった。鈴蘭灯の設置は、元町通が神戸市を代表する商店街としての地位を確立して間もないころの、1丁目から6丁目まで全丁あげて取り組んだ初めての画期的な挑戦の事業である。他都市にひけをとらない神戸市の顔を確立するための、官民をあげての事業ではなかっただろうか。先人の果敢なエネルギーによって完成した鈴蘭灯について、その後に集めた資料を通して、いましばらく考えてみたい。
まず驚くのは大正十三年十月、日本で最初に鈴蘭灯を導入した京都寺町の姿を見てから導入の検討をはじめ、発注して設置作業を終え点灯したのが大正十五年十一月、その間、わずか実質二年である。神業ともいうべき短期間での完成ではないか。
本当に、この期間で完成したのか。経過を知る糸口をもとめて当時、神戸市内で発行されていた神戸又新日報と神戸新聞二紙の記事に目を通してみた。発行年月日順に紙名、見出しを紹介すると次のような流れになる。
大正十五年六月二十日(神戸又新日報)元町通を不夜城に/一〇間隔き一二〇基の照明 灯を建て/一基に大小八個のアーク灯を点ず/元町商栄会の計画
大正十五年九月六日(神戸又新日報)照明灯を建設して/元町を不夜城に/設計案は出 来上がったが/全町の合議が纏まらぬ
大正十五年十一月五日(神戸新聞)鈴蘭の花電灯うつくしく/満街飾をする元町通/燦 たる街灯の並木をかたち作って/不夜城の大百貨店街を実現する/点灯工事完成に近 づく(鈴蘭灯の写真説明に、十七日の誓文払第一日から点灯する元町の電灯並樹)
大正十五年十一月十七日(神戸新聞)あたまに鈴蘭灯をデザイン化したかざりの中に 「元町通の一大美観/照明灯建設記念」の文字をいれ、その頁全面に十五社の宣伝 を取り入れた一面使用の企画広告。
大正十五年十一月十九日(神戸又新日報)鈴蘭灯で飾り付けた紙面上部に「元町の不夜 城/照明灯の建設」の飾りを入れ、その頁前面を十三社の宣伝で埋める企画広告。
大正十五年十二月二日(神戸新聞)四段目下に帯びで「照明灯竣成記念大売出し」の文 字を入れ、そのした九段を二十三社の宣伝で埋める企画広告。
新聞紙面に記事が登場するのは完成のわずか五カ月前の六月、その二カ月前には「全丁の合議が纏まらぬ」と報じられている。そして十一月五日、誓文払い初日の十一月十七日の点灯を、写真説明の中で報じているのだ。広告主も全丁にまたがり、全丁いっせいの鈴蘭灯完成大売りだしを行ったのである。
岩田照彦
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