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夢街道
幕末から明治にかけての村役人
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
幕末から明治にかけての村役人
2006/12/01
夢街道
幕末から明治のはじめにかけて、村のひとたちにもっともみじかな存在であったのは村役人である。
記録にのこる名前をあげると、走水村の年寄に船井長四郎。
二つ茶屋村の年寄には高濱太右衛門、吉田七郎兵衛、船井長兵衛。
神戸村では、庄屋に生島四郎大夫をあげ、年寄は中西市助、竹中平右衛門、八田善四郎の名前がある。
幕府の代表として赴任していた柴田剛中が、外国との開港式をおえ江戸へのがれたあと、薩長軍が姿をみせるまでの空白の日々、三村では、行き先の不安にかられた幕府役人の狼藉に手を焼いたことがある。そのとき、官軍の、早期の到着情報を流布して彼らをおさめたのは、生島四郎大夫をかこむ、これら村役人の知恵だったろう。
薩長軍が、兵庫島上町諸問屋会所に外国事務ならびに一般行政の仮事務所をおいたのは明治元年正月一四日である。一九日には事務所を切戸町に移し新政の施行を布告する。
新しい権力者にとって、なによりもきがかりなのは治安だ。村々取り締まり並びに公事訴訟などすべて事務所に申しいずべき旨を達している。
とはいえ、進駐してきた薩長軍が個々の問題に対応するには事情もわからずひと手もない。兵庫神戸の名主・庄屋・年寄りを召喚して、施政の秩序定まり官吏の任命決するまで従来通り執務すべきを命じている。従来とおりの掟をまもってもらうための、地元の村役人の起用である。
新政府からの伝達事項の通知、租税の高をきめおさめること、宗門人別改帳をもとに町村の戸籍状況の調査、五人組の制を存置して互いに不逞を戒めさせようという措置は、以前にもまして厳しく申し渡されただろう。
村に要する費用の支出には、財政の定まらない新政府として、厳に乱費を制するようもとめている。訴訟規則を定め、いさかいは示談和解を奨励した。庄屋・名主らに事務採決の権をあたえて、その段階での解決をはからせている。
三村には米作と裏作に菜種があり、酒造がある。商業的な要素が高度に発達しためぐまれた地域であった。が、遠くない地域では農民の不満が爆発している。
慶応四年四月、播磨国多可郡杉原谷・野間谷の農民が、物価高に怒り庄屋や高利貸宅を襲い、諸国が飢饉に見舞われた明治二年秋には三田藩農民は減免を要求、篠山藩の農民は租税軽減を求めて一揆を起こした。摂津国川辺郡藻川流域では、小作農と地主間の紛議で十八ケ村で打ち壊しの記録もある。地域の農民中心の騒動とはいえ、村役人は、三村への影響にも目配りがかかせなかったにちがいない。
明治五年六月兵庫県は、庄屋・名主は現職のまま「戸長」と呼び、いままでどおり戸籍の事務を、年寄りは「戸長」の補佐役として「副戸長」と称し、しごとの継続を布達した。
三村の村役人も、当面はそのまましごとをひきついだのであろう。
岩田照彦
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