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夢街道
肉食雑記(3)
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
肉食雑記(3)
2015/07/01
夢街道
前回、神仏との関係より、働き者への仲間意識が、食べることへの最大の抑止力になったことを書いた。その仲間意識について、日本大百科全書(小学館)が伝えるいくつかを紹介したい。
農家の年中行事として牛が登場することは容易に想像できる。
大分県の下毛郡では、正月六日を「牛の正月」といった。この日は、牛のために粉餅の雑煮をつくり、牛に食べさせる。牛の初仕事にも、地方によっていろいろな呼び方があるようだ。福岡県の企救郡では、正月の十一日を「牛の使い初め」という。和歌山県の熊野地方では「牛の追い初め」といい、岡山県英田郡では、年の初めに苗代田を鋤かせる日を「牛鍬」と呼んでいる。
西日本では六月に、牛を川や海で水浴びさせる習慣俗がある。山口県では「牛の祇園」といい、六月十五日、牛を水辺に連れ出して体を洗ってやる。海に連れて行って泳がせるのを「海の盆」と呼ぶところもある。
また宮崎県の西諸県郡では、六月二十八日を「牛越え」といい、氏神の社に連れて行って丸太棒の上を牛に超えさせる行事がある。牛の健康を祈り、神の恵みを期待する行事とされる。
牛を休ませる日というのもある。香川県では五月五日、牛を小屋に閉じ込めておき、角にショウブをかけ、ちまきとチヌの干物をかけたりする。和歌山県日高郡では、夏の土用の丑の日に、川で牛を洗い、「牛休み」として、小麦粉の団子を牛に食べさせる。
仲間への思いやりが高じ、神として信仰する地方もある。大阪の和泉地方を中心にみられるもので、大阪府岸和田市の牛滝山の大威徳明王への信仰で、子ども中心の行事ではあるが、瓦焼きの牛型を「牛のほどこし」と祀る。和泉地方の南部でも、牛神講とよばれる子供の行事がある。十五歳の男の子の家を宿にして、竹の弓矢をもって牛神参りのあと、相撲をとる習わしがある。牛への奉納相撲だ。香川県では、死んだ牛の供養のため、道端に牛神と刻んだ石塔をみることもできる。
今は耕運機にとってかわられたが、牛が家族の一員だった時代の話である。
岩田照彦
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