神戸元町商店街 KOBE MOTOMACHI SHOPPING STREET

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MOTOMACHI MAGAZINE MOTOMACHI MAGAZINE 元町マガジン

元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。

元町の教育事情(10)

元町の教育事情(10)

 授業時間の半分を習字に使った間人寺子屋、その手本の種類と順序は、いろは、仮名文、短文、在郷名、金目、名頭、屋号、五畿内、商売往来、問屋往来、千字本とは、前回書いた。その中身は、つぎのようなものだ。
 「いろは」は、文字そのもので、説明するまでもない。「い」から「ん」までの文字の練習である。仮名文は、「いろは」を習得したつぎの段階である「おはようございます」のようなあいさつ文を学ぶことだったろうか。
 短文の例文には「肴一籠進じ候。夕方参上致すべく候」をあげている。使用漢字にも制約を加えてきた現代の目からみると、仮名から一気に高度な漢字への印象は免れないが、実生活に必要な漢字という基準ではあたりまえの順序だった。
 在郷名は言うまでもなく、自分の住む周辺の村名などを正確に覚え、書くことである。暮らしに欠かせない知識であることはいうまでもない。
 金目の例文には領収證「覚 一金 何貫匁 右確に請取申候」が引用されている。
 名頭(ながしら)は、源・平・藤・橘・菅など、姓氏の頭文字が読み書きできるように学ぶものだ。よく出てくる人名の漢字を編集・列挙した寺子屋用の教材もあった。
 屋号は、創業者の生国や姓名の下に「屋」をつける例を見かけるが、日ごろの買い物にも不自由させないための教材になっている。
 五畿内とは、京都に近い山城・大和・河内・和泉・摂津を指す。この地の名称を学ぶことで、少なくとも近在の地理を身に着ける効果もあったろう。
 商売往来、問屋往来、いずれも往来物といわれるもの。鎌倉・室町の時代から明治・大正まで、手習いの初等教育用に編纂された教科書だ。さまざまな分野を網羅する初等教育の教科書として中心的な存在になったもので、次回、往来物として稿を改めたい。千字本は、一句四文字で二五〇句、重複のない千字でできていることから名づけられ、漢字を覚えるための入門書として活用された。
 文字の習得をはじめ、あいさつにはじまり地理や経済まで、身近な暮らしに欠かせないことが網羅されていたようだ。
岩田照彦
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