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夢街道
営業束縛の悪弊を禁ず
元町、という地名が登場するのは明治七年の五月である。以来、町名の根拠は、はじめにできたまち、もとのまちということになっている。
営業束縛の悪弊を禁ず
2007/05/01
夢街道
明治元年十二月、商売仲間組合を結び他の営業を束縛する等の悪弊を禁ず、の布達がある。
対象地域は、神戸・兵庫の両港である。
今般ご一新については従来旧弊一洗簡易に基づき諸商手広に執り行うようにとの趣意にもかかわらず、先だってから鑑札下げ渡し願いでる者の中から、仲間内組合を作り、跡から加入鑑札等願い出る者に故障を申し立てる、あるいは株金仲間入り用等あい掛け、小前の者の渡世を妨げ難渋致すため、甚だ窮屈手狭の取り計らいいたし向きもあると聞く。もってのほかで、下方にて中間取り締まり等たてるのは不正路の所業、諸商手広に致すべきとの趣意に背く。以後、別紙に記載の商売を除くほか、一切望みの商売勝手にするように。鑑札等願い出たい者は、直に所役人の奥印をもって願い出る。以後、不心得の者あれば取り締まりある者と心得るように。
明治元年十二月、といえばその年の一月、鳥羽伏見の戦いがおわったばかり。神戸では、備前兵による外国人を殺傷する事件もあった。七月に江戸を東京と改称するが、会津藩を降伏させたものの、榎本武揚は蝦夷地を占領して五稜郭にたてこもっている。
そんななか、組合仲間をつくって新参者には仲間への参加料までふっかける者があるとの通知をまともに聞き受け、布達している。
新政府は混乱のなかとはいえ、西国では人心安定のための措置を優先した。
その根拠になる、諸商手広に執り行うようにとの趣意とは、慶応四年(明治元年)三月、明治天皇が発布した五カ条の御誓文にある「旧来の陋習を破り、天地の公道に基くべし」を根拠にしたもので、幕府時代の秩序を打破することをねらったのだろう。
現実的なひとのうごきへの対応にも迫られていた。
前年、神戸の開港が宣言されてから、居留地に接する三村に流れ込むひとがあとをたたない。居留地の整備があり、港の整備がある。浜での荷役があり、西洋型船舶の出現で沖仲仕の仕事もある。そうした仕事をもとめてひとがながれこんでくる。英国領事は、知事と作業賃の協定をむすぶが、雇いがしらから三~四倍も請求される始末である。ながれこむひとには窮民も多い、明治元年十一月には、宇治野村にそうした人達を収容する施設までもうけている。
中にはふるさとで身につけた手の技を、あたらしい地で生かそうというひともある。商い勝手にとびついて、一獲千金を夢見るものもあれば、開港地にふたつめの店を開こうとする者もある。
役所の方は、よそ者に勝手なふるまいをされてはこまる、という地元の声も聞きとめている。職業を限定して、「望みの者は、その仲間取締の者へ一応相談の上願い出るべき事」、と歯止めをかけた。
届け出るのは、つぎの十三職種である。
売込問屋、旅宿屋、古銅古道具、古手、質屋、船大工、家大工、杣木挽、飛脚、酒造、水車、薬種屋、米屋。
岩田照彦
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